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金融商品に投資を行う場合、一般的な投資対象として株式と債券があります。株式と比較して債券はリスクを低く抑えたいと考える方にとっては、重要な投資先になります。特に国債は、基本的にはその国では最高の格付けが付され、多くの国で発行されています。その中でも米国債は米国の信用力の高さや市場規模の大きさから、世界中の投資家から注目されています。このコラムでは、米国債の基本的な知識からメリット、デメリット、投資方法などについて、わかりやすく解説していきます。
一般的に「米国債」と呼ばれているのは、米国財務省が発行する国券のことです。
日本の国債のように政府が直接の発行者ではありませんが、アメリカ合衆国政府が保証していることもあり、通常、米国債やアメリカ国債と呼ばれています。
米国債の格付けは、ムーディーズがAaa、S&PがAA+(2024年2月16日現在)であり、世界的には高位に位置しています。ちなみに日本の格付けはムーディーズがA1 、S&PがA+(2024年2月16日現在)です。
世界各国の政府が外貨準備として保有した米ドルの運用先に使うこともあり、発行規模や発行残高、そして流動性は世界的に見ても高い水準にあります。
米国債は、米国財務省が資金需要に応じて短期債、中期債、長期債および物価連動債などを発行します。短期債は利払いのない割引債として発行され、中期債、長期債、物価連動債は利払いのある利付債として発行されます。
割引債とは、額面100%に対して、90%や95%などの価格で発行することで、利払いは行われませんが満期償還で購入価格と償還価格の差が得られる方式です。一方、利付債は額面と同じ価格で発行され、半年もしくは1年ごとに決められた利率で利払いが行われます。
米国債は、4週間の短期から30年の長期まで以下のような種類があります。
米国債の名称 |
年限 |
特徴 |
トレジャリービル(T-Bills) |
4週, 8週, 13週, 26週, 52週 |
割引債 |
トレジャリーノート(T-Notes) |
2年, 3年, 5年, 7年,10年 |
利付債 |
トレジャリーボンド(T-Bonds) |
20年, 30年 |
利付債 |
インフレ連動債 |
5年, 10年, 30 年 |
元本及び利払い額が物価指数の上昇率に連動 |
また米国債には、利付債の元本部分とクーポン部分を切り離して流通させる「ストリップス債」という債券が存在します。ストリップス債は、元本部分はこの利付債の償還日を満期とする割引債、クーポン部分はそのクーポンの支払日を満期とする割引債として取引できるようにしたものです。
長期国債を購入する時は、ご自身の目的に応じて利付債、またはストリップス債を選ぶようにしましょう。
米10年国債の利回りは、リーマンショックによる金融緩和で2012年に1.5%を割る水準まで低下した後、概ね1.5%-2.5%の間で推移し、2018年10月には3%を超えていました。
しかし新型コロナウイルスによる経済の停滞から、連邦準備制度理事会(FRB)は金利を引き下げはじめ、2020年3月15日にFF金利(政策金利)の誘導目標を年0.00~0.25%に設定し、ゼロ金利政策を開始しました。
米10年国債の利回りも、金利引き下げ時に0.4%台まで低下して、直近の最安値をつけました。その後も2020年は1%を下回る利回りで推移していましたが、2021年からは1%を上回り、1.5%を中心としたレンジの動きとなりました。
2022年3月のFOMCにより利上げが開始されると、FF金利(政策金利)に連動する形で米10年国債の利回りも上昇しています。2023年10月に5%をつけたのち、若干低下し2023年12月には4%を割り込みました。
2024年に入ってからは4%台で推移しています。現在の4%台の水準は、近年で見ると比較的高い利回りであるといえます。
米国債に投資する際のメリットについて、3つ挙げて解説します。「低金利の時代では米国債を買ってはいけない」などと言われていた時期もありますが、現在は環境が変わりました。高金利の今だからこそ米国債のメリットを理解し、投資に生かしていきましょう。
日本と米国の10年債の利回りを過去30年で比較しても、日本の10年債金利が米国10年債金利を上回ったことはありません。現状でも日本の10年国債の金利が1%以下であるのに対し、米国10年債の利回りは4%以上です。10年保有すれば元利金だけでも30%の開きが出ます。
仮に為替が10年後に30%の円高になっても元利合計を考えれば、収支はトントンになります。
米国は世界最大の経済規模を誇り、また米ドルは基軸通貨です。格付けでみても、Aaa(ムーディーズ)、AA+(S&P)という格付けは世界の中でも上位に位置しており、安全性が高いといえます。
加えて多くの国が米ドルを外貨準備として保有しています。米ドルをキャッシュで持つことは少なく、主に米国債で保有しています。
世界中の国が米国債を保有しているのは安全性、流動性が高いことの証左といえます。
前述の「米国債の種類」でも説明しましたが、米国債は複数の年限で発行がされており、ストリップス債も流通していることから、利付債も割引債も、多くの選択肢が提供されています。
投資期間の途中で利金を得たいのであれば利付債、一方で投資している間、利益はいらないのであれば割引債を選択できます。日本の市場と比較しても、米国債市場は選択肢が多いので、目的に応じた債券を見つけやすいといえます。
米国債に投資する際のデメリットも3点挙げます。デメリットに関しては、投資する前に必ず把握しておきましょう。
米国債に投資するためには日本円を米ドルに交換する必要があります。たとえば1米ドル=150円の時に米ドル債額面1,000ドルを価格100%で購入すると150,000円の資金が必要になります(為替手数料を考慮せず)。
しかし償還のときに1米ドル=130円となっていると、元本部分は130,000円しか戻ってこないので、為替差損が出ます。受け取った利金や償還差益が大きければ利益は残りますが、そうでない場合は結果的に損失となる可能性がある点に注意しましょう。
債券も株式と同じように毎日価格が変動します。そして債券価格と金利は逆相関の関係にあり、金利が上昇する局面で債券価格は低下、金利が低下する局面では債券価格が上昇する傾向にあります。
したがって米国債の購入後に金利が上昇し、債券価格が低下した局面で中途売却しなければならないときには、売却損が出る可能性があります。
ただし債券は償還時には額面金額で償還されるため、金利上昇局面でも償還日が近づけば価格は額面金額に近づくという特色があります。
米国は信用格付けも高く、また米ドルは基軸通貨として信用度も高いため、債務不履行になる危険性は少ないです。ただし最近では政治的な問題から一時的な債務不履行に陥る危険性が起きています。
米国では大統領と上院または下院の政党が異なるねじれ議会の状態が続いており、大統領の政策に反発し、債務残高上限を拡大する法案の成立にギリギリまで応じないという事態が何回か発生しています。期限を過ぎると財務省は国債の新規発行ができず、利払いなどを行うことができなくなるため、債務不履行となります
これまではなんとか回避されてきましたが、直近では2025年にも同様の問題は発生するおそれがあるため、今後も動向には注意が必要です。
米国債へ投資するには「直接購入する方法」と「投資信託やETF(上場投資信託)を通じて投資する方法」の2種類があります。
投資信託であれば銀行でも購入できますが、ETFや直接購入する場合は証券会社で口座を開設する必要があります。
また外国株式や外国債券を購入する際には、別途外国証券取引口座の開設が必要です。
外国証券に投資する投資信託は国内証券に投資する投資信託とは異なり、投資対象の金融商品は海外で取引されるため、申込日の翌営業日に約定するという違いがあります。
現在ではインターネットで米国債を購入できる証券会社が増えていますが、債券は株式のように取引所で取り引きするわけではありません。通常は証券会社が値段を提示してそれに応じる形で約定する店頭取引(相対取引)で行われます。購入できる米国債は、利払いのある既発債のみ、受渡金額は額面×価格に経過利息が加わる点は覚えておくとよいでしょう。
ETFは取引所に上場されて、株式と同じように時価で売買される投資信託のことです。投資信託や直接購入する場合と異なり、購入したタイミングで約定するため、約定までのタイムラグを無くしたい場合に活用するとよいでしょう。
米国債のリスクに関してはデメリットのところで述べてきたように、為替リスクや価格変動リスクがある点を十分理解して投資をしましょう。
中長期的な視点から投資のタイミングを考えるときに注意する点を解説します。
1.金利動向
前述の「価格変動リスクがある」でも説明しましたが、米国債を購入後に金利が上昇すると債券価格が低下するリスクが発生します。FOMCでは、将来のFF金利の方向性も声明するので、今後の金利動向を知ることができます。FF金利の引き上げが想定されている場合には発表を待ってから投資してもよいでしょう。
2.経済の動向
景気の動向が悪いと予想されると株式市場が下落しやすくなります。このような場合には投資家は安全資産への投資を増やす傾向があり、また景気が悪くなると金利を引き下げることになりますので、債券価格は上昇する可能性が高まります。株式市場が調整に入ったときは債券を購入する機会ととらえても良いでしょう。
3.インフレの動向
インフレ率と金利は高い相関関係があります。高いインフレ率が続いている場合には、金利も追随して上昇する傾向があります。インフレがピークを迎えた後であれば、高い金利を長期間享受することができます。
GOファンド株式会社では、「米国債」の取扱いはありません。
しかしながら、GOファンドは匿名組合という仕組みで、日本や米国、欧州の株価指数先物や債券先物に分散投資を行い、年率15%以上(※)のリターンを目指す絶対収益型ファンドです。
※運用報酬や取引にかかる費用を考慮して計算しています。税金は計算に含まれていません。将来の運用成果を保証するものではありません。2001年1月から2020年5月までのGOファンド投資戦略を用いたパフォーマンスシミュレーションと2020年6月より運用している私募ファンドの実際のパフォーマンスを使用して算出したものになります。
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米国債は金融商品の中でも安全資産としての認識は極めて高く、その事は高い流動性や、高い格付けによって裏付けされています。米国の金利は日本の金利よりも高く、為替や価格変動などのリスクはありますが、しっかり理解してから投資をすることで高い利回りを享受できます。また米国債は日本の国債と比較して、多様な投資方法があり、自分にあった方法を選択することができますので、ぜひ米国債投資を考えてみてください。
<執筆者プロフィール>
青野 泰弘
ファイナンシャルプランナー・行政書士
1964年静岡県生まれ。同志社大学法学部卒業後、国際証券に入社。その後トヨタファイナンシャルサービス証券、コスモ証券などで債券の引き受けやデリバティブ商品の組成などに従事した。2012年にFPおよび行政書士として独立。相続、遺言や海外投資などの分野に強みを持つ。