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2024.04.04

アメリカ国債のデフォルト(債務不履行)とは?経済への影響をわかりやすく解説!

アメリカ国債のデフォルト(債務不履行)とは?経済への影響をわかりやすく解説!

投資家や経済に詳しい人のなかには「デフォルト」のニュースを聞いて不安を抱くこともあるでしょう。特に、先進国がデフォルトに陥ると、経済に大きな影響を与える可能性があることから、多くの投資家がデフォルトに対して警戒します。

本記事では、デフォルトの概要と、2023年6月にアメリカがデフォルトに陥りかけた背景についてみていきます。デフォルトになった際にどういった影響が生じるかも解説しますので、ぜひ参考にしてください。

デフォルト(債務不履行)とは?

まずは、デフォルトとはどういったものなのかをみていきましょう。

デフォルト(債務不履行)とは、一般的に債券の利払いや、元本の返済が滞ることを指します。債務者が国家の場合、国債の利払いや償還が約束通りできなくなり、国の信用が失墜して新たな資金調達が困難な状態になります。

このような状態に陥ると、国は新たに発行する国債の金利を高く設定せざるを得ません。高金利で取引される国債は、それだけデフォルトリスクが高いとみなされていることを意味します。その後、国が高い金利の支払いに失敗したり、満期時の元本を期限までに返済できなかったりすると、最終的に破綻に陥ってしまうことがあります。

このような状況になると、IMF(国際通貨基金)などの国際的な金融機関からの支援が必要になることが多く、支援を受ける際には緊縮財政の実施など、厳しい条件が課せられることが一般的です。

また、中央銀行等で新規紙幣を発行し、一時的にデフォルトの問題を切り抜けることは可能ですが、これはインフレを加速させ、最終的には経済の崩壊につながる可能性があります。

過去の事例としては、2009年のギリシャが挙げられます。ギリシャは政権交代時に隠されていた財政赤字が発覚し、ギリシャ国債が暴落。これはユーロの下落や世界経済にも影響を及ぼしました。また、ドミニカ共和国やエクアドルでも債務不履行が発生しています。

このような背景を踏まえたうえで、投資家はデフォルトリスクが高い国や、利回りが高い通貨建てのファンドへの投資には注意が必要です。高い利回りは魅力的に見えるかもしれませんが、それは同時に高いリスクをともなうことを意味するからです。

アメリカ国債とは?

アメリカ国債とは?

アメリカ国債とは、アメリカ政府が発行する債券です。この債券は日本国債と同じく財政資金の不足などを補うために使われます。アメリカ国債は世界で最も安全な債券の1つとされており、満期まで保有すれば、国が破綻しない限り確実に利益を得られることから、多くの国が外貨準備として保有しています。

また、アメリカ国債はさまざまな種類があり、特徴も異なります。以下がアメリカ国債の主な種類と特徴です。

・T-BILL/米国短期国債
1年未満(13週間、26週間、52週間)の短期国債です。割引価格で発行され、満期時に債券の保有者に額面価格が払い戻されます。

・T-NOTE/米国中期国債
2年以上10年以下の期間の中期国債で、定期的に利息が支払われます。

・T-BOND米国長期国債
10年以上の長期国債で、T-NOTEと同じく定期的に利息が支払われる仕組みです。

他にも、STRIPS(ストリップ債) やTIPS(インフレ連動債)といった種類の国債が存在し、多くの投資家がこれらの債券に投資しています。

アメリカの債務上限とは?

アメリカでは、連邦政府が発行できる国債の総額は法律によって定められており、債務に上限が設けられています。政府債務の上限を引き上げるには議会の手続きが必要で、上限が設定されて以降、幾度にも渡ってこの上限が引き上げられてきました。

債務上限の引き上げが認められない場合、国債の元本償還や利払い用の資金が不足し、債務不履行(デフォルト)に陥る危険がありますが、これまでアメリカで債務上限が引き上げられなかったことは一度もありません。

政府は、社会保障やメディケアの給付、軍人への給与支払い、国債の利払い、税金の還付などを行うために借金をする必要があり、債務上限の引き上げは避けられない側面があるのでしょう。

このことから、一部のエコノミストは1~2年に一度あるデフォルト懸念は茶番であり、心配無用であるといった意見も多いです。

2023年6月にアメリカがデフォルト(債務不履行)に陥りかけた背景

2023年6月、アメリカでは財務資金の枯渇にともなうデフォルトの危機が懸念されていました。アメリカの債務上限はこれまで何度も引き上げられており、その引き上げ自体は珍しいことではありませんでした。

しかし、今回は期限が迫っているにもかかわらず合意に至らない状況が続き、財政危機への不安が高まっていたのです。最終的に2025年1月まで債務上限の適用を停止する法案が可決され、債務不履行は回避されました。

この問題の背景には、アメリカ議会の政治的な「ねじれ」があるといわれています。議会では、上院は民主党が、下院は共和党が過半数を占めており、政策合意に至るのが難しくなっていました。特に共和党は、債務上限の引き上げの条件として、歳出削減の約束を民主党に迫っていました。

このようなねじれ議会を背景としたデフォルトの危機は、2011年、2013年、2015年にも起きています。
2011年、何とか債務上限を引き上げる法案は成立していたものの、米格付け会社S&Pは財税赤字削減への計画が不十分だとし、アメリカ国債の格下げを決定しました。
債務上限の引き上げをめぐる問題は、民主党と共和党との政治的な駆け引きの道具として取り扱われることもあります。

しかし、仮に今後、アメリカ国債がデフォルトリスクから格下げになったとしても、アメリカ経済には大きな影響はないといった楽観的な意見が多いのも事実です。過去の事例では国債の格下げ後に金利が低下し、国債が買われるという現象もみられているからです。

実際、2011年8月のアメリカ国債格下げは、債務上限引き上げ合意直後に起きた出来事にもかかわらず、国債の金利は低下しました。

これは、国債が格下げされても、アメリカでは引き続き信用リスクが低いと見なされたためです。特に自国の債券を好む投資家にとっては、格下げが許容範囲内であれば、国債の相対的な魅力は大きく変わらないのです。国債が安全な投資先としての地位を保ち続ける限り、金利の低下や国債の購入増加は続く可能性があります。

このように、国債の格下げが必ずしも金利の上昇や景気の減速につながるわけではないことがわかります。投資家や市場の反応は、単純な格付けの変更以上の要素に基づいており、時には逆の動きをみせることもあるのです。

アメリカ国債のデフォルト(債務不履行)がもたらす悪影響

アメリカ国債のデフォルト(債務不履行)がもたらす悪影響

ここからは、もし、アメリカ国債がデフォルトに陥ってしまった場合に、どのような悪影響をもたらすことになるかを予想していきます。

世界経済への打撃

アメリカのデフォルトは、世界経済に大きな影響を及ぼし、多くの国のリセッション(景気後退)や財政破綻を誘発する可能性があるでしょう。世界中の金融市場において、アメリカ国債は安全資産としての地位を占めており、デフォルトは信用不安を引き起こす恐れがあります。

このような事態は、世界中の金融市場に混乱をもたらし、株価の大幅な下落が生じる可能性が高まります。その結果、世界的な経済成長が鈍化し、リセッションへの懸念が高まると予想されるでしょう。

地政学的リスクの増加

アメリカの覇権の衰退により、西側諸国の勢力が低下し、非友好的な国家の勢力が拡大するリスクが高まります。アメリカの財政的な弱体化は、国際的な政治バランスにも影響を及ぼし、他国に対する影響力の低下を招く可能性があるでしょう。

これにより、特に安全保障や地政学的な観点から、世界のパワーバランスが変動し、不安定な状況が生じる恐れがあります。

米ドルへの影響

アメリカが国家としての信頼性が低下することにより、世界中の投資家が米ドル売りに舵を傾けると予想されるでしょう。このことで国際取引や投資における米ドルの役割に大きな変化が生じる可能性があります。たとえば、世界の基軸通貨が米ドルからユーロに変わるといったことが起こる可能性も否定できません。

また、米ドルの価値減少は、アメリカ国内での輸入コスト上昇や相対的な他国通貨の価値上昇につながり、世界経済にも波紋を広げることになります。

信用格付けの低下

アメリカ国債のデフォルト(債務不履行)は、アメリカの信用格付けの低下に大きく影響を及ぼします。2011年にはデフォルトに陥らなかったにもかかわらず、アメリカ国債の格付けが最上級のAAA(トリプルエー)からワンランク下がりました。仮に、デフォルトに陥ってしまえば格付けもワンランク程度では済まないでしょう。

住宅ローン金利の上昇

アメリカのデフォルトは住宅市場にも影響を与える可能性があるでしょう。
アメリカ国債のデフォルトが生じると、市場の投資家はリスク回避のためにアメリカ国債を売り始めることが予想されます。国債の売りが増加すると、国債価格は下落し、国債利回りは上昇してしまうのです。

アメリカの住宅ローン金利は一般的に固定金利が多いですが、この固定金利は長期国債の利回りに連動する傾向があります。そのため、利回りが上昇することにより、金融機関は住宅ローン金利の見直しを実施し、その結果として住宅ローンの金利は上昇する可能性があります。

住宅ローン金利の上昇は、個人の返済負担を重くし、住宅市場に影響を与える可能性があります。

インフレとコストの増加

昨今、FRB(連邦準備制度理事会)は積極的にアメリカのインフレ抑制に取り組んできました。しかし、アメリカ国債のデフォルトが起きると、FRBのインフレ抑制策に逆風が吹く可能性があります。

まず、デフォルトによりアメリカ国債の売りが加速して金利は上昇、それにともないアメリカ国内でインフレが加速すると想定されます。そうなるとアメリカ政府の資金調達コストも増加してしまい、財政難への懸念が高まります。

さらに、ガソリン代や食料品、その他の生活必需品の価格上昇が予想され、多くの家庭で家計の圧迫が懸念されるでしょう。

デフォルト(債務不履行)に備えとれる対策は?

デフォルト(債務不履行)に備えとれる対策は?

アメリカがデフォルトに陥ることを予測して、対策をとることは極めて困難です。アメリカ国債は世界経済に深く結びついており、そのデフォルトは広範囲に影響を及ぼします。そのため、個別の投資家や企業が直接的な対策を講じることはほぼ不可能といえます。

最善の方法はリスク分散と、市場の動向に対する継続的な注視くらいです。それでもアメリカのデフォルトは世界的な経済危機を引き起こす可能性があるため、その影響を完全に回避することは難しいでしょう。

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今後、アメリカがデフォルトに陥る可能性は低いと判断する人も多いかもしれません。しかし、万が一アメリカでデフォルトが起きた場合には、金融商品を保有している多くの投資家に影響を与えることになるでしょう。

当然、GOファンドにおいても何かしらの影響を受けると思われますが、中長期のスタンスで資産運用を検討しているならば、独自の投資戦略を用いて世界中(先進国)の資産に分散投資をおこない、市場が下落相場であっても負けない運用を目指しているGOファンドの資産運用サービスを利用してみてはいかがでしょうか。

投資のプロが長期に渡って代わりに運用してくれるため、これから投資を始めてみようと検討している人にもおすすめです。

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まとめ

デフォルト(債務不履行)とは、一般的に債券の利払いや、元本の返済が滞ることを指します。過去にアメリカでは何度もデフォルトの危機が訪れましたが、そのたびに債務上限を引き上げることで回避してきました。そのため、アメリカがデフォルトに陥る可能性は極めて低いといえるかもしれません。

しかし、「コロナウイルス」に「ロシア問題」といった予想していなかったことが起こる時代です。アメリカ国債を過信するのではなく、万が一に備えて資産分散などを講じておく必要があるでしょう。

 

<執筆者プロフィール>

辻本 剛士様

辻本 剛士
神戸・辻本FP合同会社 代表
1984年8月3日生まれ。大学卒業後、医薬品・医療機器会社に就職し、在職中にFP1級、CFP、宅地建物取引士に独学で合格。会社を退職後、未経験から神戸で数少ない独立型FPとして起業。現在は相談業務、執筆業務を中心に活動している。