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金(ゴールド)は、宝飾品としての用途と、投資資産としての用途の2つを兼ね備えています。
世界で価値が共有される実物資産の金は、紛争や経済危機(バブルの崩壊など)といった有事に強い資産といわれています。より分散効果の高い運用を目指すために、金を投資対象の一部に組み入れてみてはいかがでしょうか。
本記事では、投資資産としての用途にフォーカスして、金のさまざまな投資方法や始め方、投資した場合のメリット・デメリットについて説明します。
金(ゴールド)投資には、「売買により収益を上げる目的としての投資」と、「無価値になるリスクがない金の特徴を生かした資産を守る目的として投資」の2つがあります。
収益を上げる目的で行われる投資方法として、「金先物取引」や「金ETF」、「投資信託」などがあります。
一方で、資産を守る目的として行われる投資は、「現物取引(金地金やコイン)」や「純金積立」などがあります。守る目的の投資は、紛争や経済危機(バブルの崩壊など)に備えるため、長期投資が前提になります。詳しくは「金投資の種類」で説明しています。
金投資だけという投資家は少なく、株式や債券、不動産など他の資産と組み合わせて分散投資を行うのが一般的です。
また、金投資にかかるコストは投資の種類により異なります。現物取引や純金積立など金の保有を目的にした投資では、金先物取引や金ETF、投資信託にはない保管料などコストが発生します。
金(ゴールド)の価格が変動する主な要因としては、主に下記が挙げられます。
1.需要と供給によるもの
2.戦争や紛争な地政学リスクの高まりによるもの
3.バブルの崩壊など経済危機の発生によるもの
4.円高・円安など為替変動によるもの
1つ目の需要と供給によるものとしては、好景気で宝飾品の需要が増すケースや、各国の中央銀行が資産に占める金の保有比率を引き上げるケースなどが金価格の上昇要因になります。
2つ目の地政学リスクの高まりと、3つ目の経済危機の発生も、金価格の上昇要因になります。
4つ目の為替変動の要因は、金価格の指標が現物取引ではロンドンの金市場、金先物がニューヨーク商品取引所になっており、両方とも取引がドル建であるために起こります。
そのため、金価格の推移をチャートで確認する場合は、円建て価格だけではなくドル建ての価格の推移もチェックすることが必要です。
出典:金価格推移|三菱マテリアル株式会社
8.主要な上場商品の特性と価格変動要因|日本商品先物振興協会(JCFIA)
金(ゴールド)投資は、投資家が現物(金地金やコイン)を保有して投資をする現物取引や純金積立と、投資家が金を保有せずに行う金先物取引や金ETF(上場投資信託)、投資信託などがあります。ここでは、それぞれの投資方法の仕組みや注意点、コストなどついて、他の投資方法を比較しながら説明をしていきます。
現物への投資方法には、「現物購入」と「純金積立」の2つの方法があります。
「現物購入」は、金を扱っている業者から金地金(インゴット)や金貨(コイン)を購入して保有する方法です。金地金は、5g~1kgの間で重量別に何種類か用意されていています。
金貨は、ウィーン金貨ハーモニー(オーストリア)、メイプルリーフ金貨(カナダ)などがあり、こちらも重量別に選べるようになっています。
500g未満の金地金は、購入時に1本ごとに売買手数料が発生します。手数料は重量や購入時、売却時、業者により異なります。
盗難などの危険を避けるために購入した金を業者で保管(寄託)してもらう方法として、「消費寄託」と「混蔵寄託」があり、混蔵寄託には保管料が発生します。
一方の「純金積立」は、毎月の購入金額を決めて定期継続して投資する方法です。購入金額を一定にすることで、平均の購入単価を低く抑えられるドルコスト平均法の効果が期待できます。
純金積立の場合、毎月の購入金額を業者の営業日数で割って毎日購入するという点が、毎月決まった日に買い付けを行う投資信託などの積立投資とは異なります。
積立した金の受け取り方法は、金地金での受け取り、現金(市場売却受託サービス)などから選択ができます。
積立にかかるコストは、年会費と積立購入手数料です。積立購入手数料は、毎月の積立金額により違います。また、現物取引と同じように、寄託の種類によっては保管料が発生します。
出典:金地金・金貨|三菱マテリアル株式会社
積立購入|田中貴金属工業
積立購入について|日本マテリアル
積立購入のメリット|三菱マテリアル株式会社
金先物取引は一般的な先物取引と同じように、あらかじめ定められた期日に商品(金)を取引時点で定められた価格(約定価格)で「買い」「売り」の取引をします。
「売り」注文から取引を始められるのが先物取引の特徴です。
金先物取引を始めるには、取引業者に口座を開設し証拠金を預託します。
証拠金取引では、証拠金の数倍から数十倍の取引が可能なので資金効率の高い運用ができ、大きな利益が期待できます。その反面、損失も大きくなり、追証(追加の証拠金)が発生するリスクもあります。
金先物取引は「金標準先物」「金ミニ先物」「金限日先物」の3種類です。
金標準先物と金ミニ先物には決済期限があり、金現日先物には決済期限がありません。
取引単位は、金標準先物が1kg単位、金ミニ先物と金限日取引が100g単位になります。
金先物取引では、1gの金価格を確認しながら売買します。
金標準先物の場合、金価格が1円動くと1,000円の損益が上下することになります。
金ミニ先物と金限日先物では金価格が1円動くと100円の損益が上下します。
証拠金を抑えて取引を始めたい人は、金ミニ先物や金限日取引が選択肢になります。
金標準先物と金ミニ先物は決済期日が決まっているため、他の投資方法(純金積立、金ETFなど)に比べ、1つの取引期間が短くなります。
金投資初心者の人は、金相場の値動きやチャート分析をある程度理解してから検討したほうがいいでしょう。
出典:先物(さきもの)取引って何?|日本商品先物振興協会(JCFIA)
GOLD金先物取引のご案内|株式会社大阪取引所
金ETF(上場投資信託)が購入できるのは証券会社です。一般の投資信託のように、銀行など他の金融機関では購入できませんので注意しましょう。
金ETFは証券会社を選ばずに購入が可能ですが、証券会社ごとに売買手数料が異なります。
証券会社で口座を開設する前に確認しておきましょう。
保有時にかかる信託報酬は運用会社が設定します。銘柄により異なりますが、年率0.5%前後と低いコストで投資が可能です。
購入単位は1口から購入、10口からできるものと銘柄により異なります。
たとえば、市場価格が2万円、購入単位1口のケースでは、2万円+買付手数料で投資をスタートできます。
売買は市場価格で行い、株式と同様「指値注文」「成行注文」ができます。
金ETFはインデックス型のETFなので、下記のように連動する指標があります。
・円換算した「金地金価格(ロンドン金値決め)」との連動を目指すもの
・「グラム・円」単位の金の理論価格との連動を目指すもの
・先物を投資対象とした場合、東京商品取引所(TOCOM)におけるTOCOM金先物の期先限月の清算値(帳入値段)を対象指標にしているもの
また、ETFの中には、一定の受益権口数を保有していれば、金地金と受益権を交換できるものもあります。
出典:金ETF|日本取引所グループ(JPX)
SPDRゴール|日本取引所グループ(JPX)
純金信託|日本取引所グループ(JPX)
One・金先物|日本取引所グループ(JPX)
NF金価格|日本取引所グループ(JPX)
投資信託は上記の金ETFと違い、証券会社以外の金融機関(銀行など)でも購入が可能です。ただし、金融機関ごとに取り扱っている投資信託が異なりますので、事前に取扱有無の確認する必要があります。
金に投資する投資信託の購入方法は、株式や債券などを投資対象とする投資信託と変わりません。
金関連を投資対象にした投資信託の中には、金の採掘や精錬を行う企業の株式に投資をするものもあります。これは、純金積立や金ETFにはない特徴といえます。
また、投資信託では、複数の資産(株式や債券、REITなど)に分散して投資をするバランス型ファンドの中にも金を組み入れているものがあり、これも他の投資方法にない投資信託の特徴です。
金自体を投資対象とする投資信託の投資する先は、金を売買する有価証券やETFなどになります。ETFが投資対象になっているものでしたら、直接そのETFを購入した方が運用コストを抑えることができるでしょう。
ただし、ETFの場合、金額指定の購入や自動で積立投資ができないなどの制約があります。自身の投資スタイルに基づいて検討するようにしましょう。
また、金ETFのように受益権口数に応じて金地金と交換できる投資信託はありません。
出典:iシェアーズ ゴールドインデックス(H無)|ウエルスアドバイザー株式会社
三菱UFJ 純金ファンド|ウエルスアドバイザー株式会社
ブラックロック・ゴールド・ファンド|ウエルスアドバイザー株式会社
金(ゴールド)取引では、現物購入・純金積立、金先物取引、金ETF、投資信託などさまざまな取引方法があります。金投資のメリットについては、現物取引でも金価格の変動を投資対象にした金先物取引や金ETFでも、金自体の特性がメリットになるため違いはありません。ただし、現物取引に関しては、手数料の部分で他の取引方法にはないデメリットがあります。
金投資のメリットは、金自体の希少価値を世界中で認識していることから無価値にならない点、インフレに強い点、株式や債券など資産と異なる動きがあり分散効果が期待できる点です。
金は、昔から希少価値のあるものとして世界中で価値が共有されています。ですから、価格が上下することはあったとしても、株券のように発行した企業が倒産して0円になってしまったことは過去一度もありません。
また金には、それ自体に価値がある実物資産のため、理論上、無価値にはならないというメリットがあります。そのため、金は守りに強い資産といわれています。
ただし、景気回復期に株式のような価格上昇が期待しづらいため、資産のすべてを金にしてしまうのは得策ではありません。
金は、インフレに強い資産といわれます。インフレとは、物やサービスの値段が上がり、相対的にお金の価値が下がる状況のことです。
一般に、インフレに強い資産として、金や不動産などの実物資産と、株式や投資信託など有価証券があります。その中でも金は、前述したメリットにもあるように世界中で価値が共通なので、安心して保有できる資産になります。
逆に、固定金利の国内債券のように利子が一定で満期時の元本(額面金額)が決まっているものは、お金と同様にインフレによって価値が下がります。
金は、株式や債券、REITなど他の資産と異なる値動きをします。そのため、金を含めた分散投資をすることで、資産全体の価格変動の振れ幅を抑えることが期待できます。
株式やREITは、一般的に景気回復時に値上がりし、景気のピークが過ぎた後退期に下落する金融資産です。債券の金利が上がっている景気のピーク時に投資を行う金融商品ともいえます。
一方の金は、好景気時は株やREITと同じ方向に動きます。ただし、株式やREIT、債券は地政学リスクなどが高まった場合に下落するものの、金は逆に上昇する傾向があります。
金の主なデメリットは以下の3つです。
・利子・配当などインカムゲインが得られない
・為替の影響を受ける
・手数料が比較的高め
以下、それぞれのデメリットについて詳しく解説していきます。
金投資のデメリットの1つ目は、金自体が企業のように活動して収益をあげたり、成長したりするものではないことです。そのため、株式のように投資した企業の収益からの配当は見込めません。
また、企業が成長するために行う設備投資などの資金調達で発行する、社債からの利子収入も見込めません。
金に期待できる収益は、需要が供給を上回るか、インフレや地政学リスクが高まった時の値上がり益(キャピタルゲイン)だけになります。
金投資の2つ目のデメリットは、為替の影響を受ける点です。
金の取引は、現物取引と先物取引があり、それぞれ中心となる市場が異なります。現物取引は、ロンドンの金市場で毎営業日2回(10:30と15:00)指標価格がドル建て決まり、その価格に基づいてニューヨーク、チューリッヒ、香港・シンガポール、日本など各市場で取引され取引価格が形成されます。
日本市場は、円建てによる取引のため円ドルレートの変動が金価格に影響します。金の先物価格はニューヨーク金市場が指標価格になり、こちらもドル建てです。
金投資では、現物取引の手数料に割高感があります。
たとえば、金地金では、500g未満の取引に対して1本ごとに売買手数料がかかります。
少ないグラム数(5g、10g、20gで4,400円など)の場合、他の投資方法(ETFや投資信託)に比べ割高です。また、購入業者に保管(寄託)する場合に、寄託方法によって保管料がかかる場合があります。
純金積立は、業者により異なりますが、年会費(1,000円前後)と毎月の購入時に積立購入手数料(1.5%~3%程度)がかかります。
出典:金地金|三菱マテリアル株式会社
マイ・ゴールドパートナー|三菱マテリアル株式会社
よくあるご質問|田中貴金属工業
これまで説明してきたように、金は守りに強い資産になります。ただし、あくまでも分散投資の1つとして、株式や債券、不動産など他の資産と組み合わせて行うのが一般的です。
「GOファンド」は「金先物取引」、「金ETF」、「投資信託」、「現物取引(金地金やコイン)」や「純金積立」の取扱いはありません。
しかしながら、GOファンドが提供している資産運用サービスは市場動向(上昇・下落)に左右されず年率15%以上(※)のリターンを目指す絶対収益型ファンドです。
※運用報酬や取引にかかる費用を考慮して計算しています。税金は計算に含まれていません。将来の運用成果を保証するものではありません。2001年1月から2020年5月までのGOファンド投資戦略を用いたパフォーマンスシミュレーションと2020年6月より運用している私募ファンドの実際のパフォーマンスを使用して算出したものになります。
GOファンドの投資先は、日本国債、日本・米国・欧州の株価指数先物・債券先物になり、金への投資は行っていません。GOファンドと金投資を組み合わせることで、高い収益性と分散効果の向上が期待できます。また、初回投資は10万円~、追加投資は1万円~と、少額から投資を始められます。
金は、世界でその価値が共有されている実物資産になります。理論上、無価値にならないという大きなメリットがある一方で、利子や配当を生み出さないというデメリットもあります。
株式や債券など他の金融資産とは異なった値動きをする金は、より分散効果の高い運用を目指すための有効な投資先といえます。
また、純金積立、金先物取引、金ETFなどさまざまな運用方法があるので、自分に合った運用方法を見つけることができるでしょう。
<執筆者プロフィール>
恩田 雅之
オンダFP事務所 代表
2004年のオンダFP事務所を札幌に開業。初心者向け資産運用に関するセミナーと投資信託などの資産運用を中心として記事の執筆及び生命保険、住宅関連(ローンや税金など)、クレジットカード、カードローン、暗号資産などの記事監修を中心に活動しています。セミナーと執筆では初心者の方にもわかりやいすように、平易な言葉を使うよう心掛けています。