COLUMN
為替ヘッジは、為替変動リスクを抑えるために行う方法です。
投資信託でも、為替ヘッジ「あり」・「なし」を選べるファンドがあり、投資信託初心者の人は、為替ヘッジ「あり」・「なし」のどちらを選ぶか悩まれることも多いのではないでしょうか。
このコラムでは、為替差損益の仕組みや為替ヘッジ「あり」・「なし」それぞれのメリット・デメリット、為替ヘッジ「あり」・「なし」を選ぶ際のポイントについて、わかりやすく解説しています。ぜひ、ご一読ください。
為替ヘッジを説明する前に、「為替差損益」が発生する仕組みについて説明します。
為替差損益は、円・ドルなどの為替レートが変動することにより発生する損益です。
たとえば、為替レートが1ドル100円の時に50万円でドルを買うと5,000ドル購入することができます。1年後の為替レートが1ドル110円と円安になると、5,000ドルは円換算で55万円(110円×5,000)になります。その時点でドルを円に換えると5万円の為替差益を得ることができます。
逆に、1年後の為替レートが1ドル90円と円高になると、5,000ドルは円換算で45万円(90円×5,000)です。その時にドルを円に換えると5万円の為替差損が発生します(為替手数料等は考慮していません)。
以上のように、ドルなど他の通貨に対して円高・円安になることで為替差損益が発生します。そのような為替差損益を回避(ヘッジ)するために、為替ヘッジは行われます。
為替ヘッジは、為替変動リスクを回避(ヘッジ)するために行われます。その方法が「為替予約」です。
為替予約は、将来売買する時点の為替レートを今決めて(予約して)おきます。それにより、為替変動による損失を回避(ヘッジ)することができます。
ただし、為替予約にはコストがかかります。コストは2国間の金利差によって決まり、金利の高い通貨を売り、金利の低い通貨を買う時に発生します。最近のように日米の金利差(短期金利)が大きいと、コストもそれに応じて増えます。
海外資産を投資対象にする投資信託の主なリスクの中に「為替変動リスク」があります。このリスクを回避するために為替ヘッジが行われます。
為替ヘッジ「あり」は、上記の為替予約を行い、為替変動リスクを抑えた運用をしています。為替ヘッジ「なし」では、為替予約を行わないため、基準価額の変動要因として「為替変動リスク」が残ります。
どっちがいいかは、今後の為替動向によって変わります。円高に振れるようでしたら「あり」がいいですし、円安に振れるようでしたら「なし」がいい選択になります。
ここでは、同一のファンドで為替ヘッジ「あり」を選択した場合の主な「メリット」・「デメリット」について、それぞれ説明します。
ただし、為替動向によっては逆にメリットがデメリットとなり、デメリットがメリットとなるので注意が必要です。
為替ヘッジを「あり」にするメリットは、為替変動リスクを回避することができる点です。
基準価額への外国為替相場の影響を抑えることができるので、基準価額の変動要因は主に投資資産の価格となります。
そのため、為替ヘッジ「あり」のファンドは、為替ヘッジ「なし」のファンドに比べて、基準価額の変動を抑えることが期待できます。
為替ヘッジを「あり」にするデメリットは、そのファンドに投資した後に円安になった場合、為替差益によるリターンを得られなくなる点です。そのため同一のファンドに投資していても、為替差益を得られない分、為替ヘッジ「なし」よりも円安時の運用パフォーマンスが悪くなります。
また、為替ヘッジを行うための為替予約には金利差によるコストがかかる点もデメリットです。そのコスト分、為替ヘッジ「なし」に比べ運用パフォーマンスが落ちます。
為替ヘッジを「なし」にする主なメリットは、円安局面で為替差益が得られる点と為替ヘッジのコストがかからない点です。デメリットは、為替変動リスクを回避できず、円高により基準価額が下がってしまう可能性がある点です。
為替ヘッジを「なし」にするメリットは、円安局面で為替差益が得られることです。
たとえば、基準価額の変動要因として、資産価格の変動要因がプラス50円、為替の変動要因がプラス20円である場合を考えます。
為替ヘッジ「なし」のファンドの基準価額は70円上昇しますが、為替ヘッジ「あり」の場合は、基準価額の変動要因が資産価格の値動きだけなので、基準価額の上昇は50円に留まります。
また、為替ヘッジ「なし」は、為替ヘッジのコストが発生しないので、その分運用コストを抑えられます。
為替ヘッジを「なし」にするデメリットは、為替変動リスクがある点です。円高による為替差損の発生は、基準価額を押し下げる要因になります。
たとえば、基準価額の変動要因として、資産価格の変動要因がプラス100円、為替の変動要因がマイナス20円である場合を考えます。
為替ヘッジ「なし」のファンドの基準価額は80円上昇しますが、為替ヘッジ「あり」の場合は資産価格の変動要因のプラス100円のみが、そのまま基準価額の上昇に寄与します。
また日々、為替動向を気にしなければならない点もデメリットといえます。
為替ヘッジの「あり」・「なし」を選ぶ際のポイントは、為替レートが変動する要因を理解して、現在の為替の状況や将来の為替動向を考えて予測することです。
中長期の為替レートは、2国間の金利差や貿易収支など決まるといわれています。
金利の高い国の通貨が高く、金利の低い通貨が安くなる傾向があります。
また、貿易収支では、黒字国の通貨が高くなる傾向があります。
この2点から今後の為替動向を考えて「あり」・「なし」を選択するといいでしょう。
これまで説明してきましたように投資信託の「為替ヘッジ」は円高リスクを回避するために行われています。
「GOファンド」は 投資信託ではありません。
GOファンドでは「為替ヘッジ」を行っていませんが、先物へ投資することで価格変動リスクの回避(ヘッジ)や軽減を図っています。投資先は、日本国債、日本・米国・欧州の株価指数先物・債券先物になります。
GOファンドは、独自の戦略で年率15%以上(※)のリターンを目指して運用している絶対収益型のファンドです。
口座開設はネットから簡単にでき、初期投資10万円~、追加投資は1万~と、少額から始められます。
投資した後は、充実した月次レポートで運用状況などを詳細に確認できます。
また、オンラインの運用報告会では、直接ファンドマネージャーが運用状況や今後見通しなどの説明をしています。
※運用報酬や取引にかかる費用を考慮して計算しています。税金は計算に含まれていません。将来の運用成果を保証するものではありません。2001年1月から2020年5月までのGOファンド投資戦略を用いたパフォーマンスシミュレーションと2020年6月より運用している私募ファンドの実際のパフォーマンスを使用して算出したものになります。
為替ヘッジ「あり」・「なし」とも上記で説明しましたように、それぞれ「メリット」・「デメリット」があります。為替の状況によって、「メリット」・「デメリット」が入れ替わる点が為替ヘッジの「あり」・「なし」の選択を難しくします。
海外資産へ投資をする投資信託では、円高による基準価額の下落を抑えるために為替ヘッジが利用されますが、円安により発生する為替差益を諦めなければなりません。
ちなみに、為替ヘッジ「あり」・「なし」を用意しているファンドの個々の純資産総額をみますと、「なし」のタイプの純資産総額のほうが大きいという傾向でした。
<執筆者プロフィール>
恩田 雅之
オンダFP事務所 代表
2004年のオンダFP事務所を札幌に開業。初心者向け資産運用に関するセミナーと投資信託などの資産運用を中心として記事の執筆及び生命保険、住宅関連(ローンや税金など)、クレジットカード、カードローン、暗号資産などの記事監修を中心に活動しています。セミナーと執筆では初心者の方にもわかりやいすように、平易な言葉を使うよう心掛けています。