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2025.05.14

投資信託の利回り(リターン)とは?計算方法や選ぶときのポイントも解説

 

投資信託の収益などを表す用語として、利回り(リターン)や騰落率、パフォーマンスなどがありますが、それぞれの意味は全く異なります。正確に理解しておかなければ、自身の投資方針と異なる投資信託を選んでしまう可能性があります。 

 

この記事では投資信託の利回りとは何か?騰落率とパフォーマンスとの違いや、利回り以外に投資信託を選ぶときに意識したいポイントについて解説しています。

 

投資信託の利回り(リターン)とは?

 

投資信託の利回りとは、投資信託を買った金額に対する収益の割合のことです。

 

特に指定がない限りは、1年間の運用利回りを「利回り」と呼ぶことが一般的で、以下の計算式で計算をします。

 

 【1年間の利回りの計算方法】

 利回り(%)=年間の投資信託の収益÷年間投資額×100

 

投資信託の価格のことを基準価額といいますが、基準価額1万円のときに購入して、1年後1万1,000円になったタイミングで売却をすれば、1,000円の収益になります。

 

この場合の利回りは売却益1,000円÷投資額1万円×100=10%です。

 

運用期間中の平均利回りを計算したいときは、以下の計算式を使います。

 

 【運用期間中の平均利回りの計算方法】

 利回り(%)=投資信託の収益÷運用年数÷投資額×100

 

また投資信託の収益は、投資信託を売却したときの収益だけではありません。

 

投資信託の中には、投資信託を保有していると、定期的に分配金が支払われる商品もあります。

 

例えば投資信託1万円分を保有していて、年間300円の分配金を受け取り、なおかつ1年後に1万1,000円で売却した場合の利回りは以下のように計算します。

 

(売却益1,000円+分配金300円)÷投資額1万円×100=13%

 

つまり投資信託の利回りを計算するときに使用する投資信託の収益とは、売却益と分配金を合計した金額となります。

 

利率との違い

 

利率とは、一般的に債券や預貯金の利息収入に対して使う言葉です。

 

例えば債券を100万円購入して1年後1万円の利息が付く場合、利率は1%です。あるいは100万円を預けて、1年後2,000円の利息が付く場合の利率は、0.2%となります。

 

利率は元本に対する預貯金の利息収入で計算しますが、利回りは元本に対する利息と売却益の合計額で計算をするという点が異なります。

 

【利率と利回りの違い】

・利率(%)=利息÷元本×100

・利回り(%)=(利息+売却益)÷元本×100

 

騰落率(とうらくりつ)との違い

 

投資信託の騰落率とは、一定期間の基準価額の変動率のことです。

 

例えば基準価額1万円の投資信託が9,000円に値下がりした場合の騰落率はマイナス10%、1万1,000円に値上がりした場合の騰落率は10%となります。

 

投資信託の騰落率は、分配金を考慮されていないという点が利回りと異なるポイントです。

 

【騰落率と利回りの違い】

・騰落率(%)=売買損益÷元本×100

・利回り(%)=(売却益+分配金)÷元本×100

 

パフォーマンス(運用実績)との違い

 

投資信託におけるパフォーマンスとは運用実績のことです。

 

投資信託の中にはベンチマークという、運用する際に目標とする基準を設定しているものがあります。

 

パフォーマンスは、このベンチマークと運用実績を比較し、ベンチマークを上回る場合は「パフォーマンスが良い」、反対にベンチマークを下回る場合は「パフォーマンスが悪い」と評価します。そのため、「利回りが大きい商品ほどパフォーマンスが良い」とは限りません。

 

投資信託の利回りが、その投資信託の収益を表す指標であるのに対し、パフォーマンスは投資信託の収益が目標とする基準に対して、良いのか悪いのかを表す、という違いがあります。

 

投資先によって利回り(リターン)は異なる

 

投資信託の利回りは、投資対象によって異なります。

 

投資信託は、運用会社が多くの投資家からお金を集めて、そのお金をまとめて株式や債券などに投資をする仕組みです。

 

一般的に債券よりも株式のほうが大きなリターンを狙える半面、値動きが大きい傾向があるため、株式への投資比率が高い投資信託ほど、ハイリスク・ハイリターンの商品になります。

 

投資信託の投資対象は、国内債券、国内株式、海外債券、海外株式の他にも不動産、コモディティなど多岐にわたり、投資対象によって利回りとリスクが異なります。

 

利回りが異常な投資先には注意が必要

 

利回りをランキングで並べてみると1年間の利回りが異常な商品もありますが、こうした投資信託には注意が必要です。

 

投資信託の中には、ブル・ベアファンドなどベンチマークに対して数倍の利益を狙う商品があり、市況が良い場合は大きな利回りとなる可能性がありますが、反対に市況が悪化したときの損失も大きくなります。

 

このように利回りが異常な商品は、大きなリスクを取っていたり、一時的に運用が好調だったときのものに過ぎない可能性があります。

 

利回り以外で投資信託を選ぶ際のポイントとは?

 

利回りは投資信託を選ぶときの重要なポイントの1つですが、確認すべきポイントはそれだけではありません。投資信託を選ぶときは、投資対象、手数料、分配方針も確認しておきましょう。各ポイントについて詳しく解説します。

 

投資対象

 

投資信託が何を投資対象にしているかで、利回りやリスクが変わります。株式や債券、不動産などどのような資産にどれくらいの割合で投資をしているのか、事前に確認しておきましょう。

 

主な投資対象や投資割合は、投資信託の目論見書に記載されています。

 

手数料

 

投資信託は主に以下のような手数料がかかります。

 

  • 購入時手数料・・・「購入時」に金融機関などの販売会社に支払う手数料
  • 信託報酬・・・投資信託を保有している期間中、保有額に応じて日々支払う費用
  • 信託財産留保額・・・投資信託を解約(売却)するときにかかる手数料

購入時手数料と信託財産留保額はかからない投資信託もありますが、信託報酬はほぼすべての投資信託で発生するコストです。

 

信託報酬は保有額から毎日差し引かれるため、長期運用をする際には大きなコストになる可能性があります。投資信託の利回りにも影響を与えるため、慎重に比較しましょう。

 

分配方針

 

分配金を支払うタイプの投資信託は、毎月、隔月、年2回など、分配金の支払頻度や、分配金額、基準価額がいくらになったら分配金を支払うかなどの分配方針が定められています。

 

投資信託の分配金は投資信託の資産から支払われるため、分配金が支払われるたびに基準価額が下がります。

 

そのため分配金の支払方針によっては、基準価額が増えにくい、あるいは減少する可能性もあるため、あらかじめ確認しておくことが大切です。

 

まとめ

 

投資信託の利回りとは、投資信託を買った金額に対する収益の割合です。収益とは、投資信託の売却益と分配金を指します。

 

投資信託は何を投資対象にしているかで利回りが異なるため、投資信託を選ぶときは、どの投資先にどれくらい投資をしているか確認をして、自身の投資方針と合っているか確認をすることが大切です。

 

また手数料も投資信託の利回りに影響するため、購入する前に十分確認しておきましょう。分配金を払う投資信託の場合は分配方針の確認も必要です。

 

 

<執筆者プロフィール>

金子賢司(かねこけんじ)
CFP
東証一部上場企業(現在は東証スタンダード)で10年間サラリーマンを務める中、業務中の交通事故をきっかけに企業の福利厚生に興味を持ち、社会保障の勉強を始める。以降ファイナンシャルプランナーとして活動し、個人・法人のお金に関する相談、北海道のテレビ番組のコメンテーター、年間約100件のセミナー講師なども務める。趣味はフィットネス。健康とお金、豊かなライフスタイルを実践・発信しています。