COLUMN
ロボアドバイザーは、システムが投資のアドバイスなどをしてくれるサービスです。ロボアドバイザーを利用すれば、資産運用をする時間がない方や投資初心者の方でも、手間をかけずに資産運用を始めることができます。
非常に便利なサービスですが、メリットばかりではありません。この記事では、ロボアドバイザーの基礎知識やメリット・デメリット、どのような人に向いているかについて解説しています。
ロボアドバイザーとは、いくつかの質問に答えるだけで、自身に合った運用プランを提案してくれるサービスのことです。略して「ロボアド」と呼ばれることもあります。
通常、投資対象を選ぶ際には、自身の「リスク許容度」を知ることが大切です。リスク許容度とは投資で損失が出るリスクをどこまで受け入れられるかという度合いのことで、主に次のような項目から判断します。
一般的にリスク許容度が高い方は、積極的にリスクをとって大きなリターンを狙うことが可能ですが、リスク許容度が低い方は、リスクを抑えた安定的な運用を行うことが基本です。
しかしリスク許容度をはかる尺度にはさまざまな項目があり、自身でリスク許容度を把握し、投資対象を選ぶのは不安という方もいるかもしれません。
ロボアドバイザーを活用すれば、質問の回答からシステムが本人のリスク許容度を分析し、適切な投資対象やポートフォリオ(投資対象の組み合わせ)を提示してくれます。
一般的に株式や投資信託で利益が出た場合、利益に対して所得税と住民税合計で20.315%の税金がかかります。一方でロボアドバイザーは投資対象によって発生する税金が異なります。
ただし、NISA口座を利用し、ロボアドバイザーへ投資をした場合は、運用益が出ても課税されることはありません。
ロボアドバイザーにもよりますが、主に以下のような資産を投資対象としています。
投資では値動きの特徴が異なる金融商品を組み合わせることにより、リスクを抑えられます。しかし分散投資をするには、各資産の値動きの特徴を理解していることが必要です。
ロボアドバイザーなら、各資産の知識が十分ではなくても提案されたプランに従うだけで分散投資ができます。
ロボアドバイザーはアドバイス型と投資一任型の2種類があり、アドバイス型はリスク許容度の診断や運用プランのアドバイスが受けられますが、金融商品の買い付けは自身で行う必要があります。一方で、投資一任型はアドバイス型の内容に加え、金融商品の買い付けや資産配分の見直しまですべて行ってくれるという違いがあります。
両者の違いについて、詳しく解説していきます。
アドバイス型は運用期間や目標額などの質問事項に回答するだけで、自動的に自身に合った運用プランが提示されるタイプのロボアドバイザーです。
ユーザー側はアドバイスに基づいて、自身で売買を行うことになります。
投資経験が豊富な方であれば、アドバイスを参考にしながらも、自身でロボアドバイザーの提示した金融商品とは異なる金融商品も取り入れることができます。
ただし資産配分の変更を自身の判断で行わなければならないため、投資に時間をかけられない方は手間に感じるかもしれません。
投資を続けていると、各金融商品の価格変動によって当初の資産配分とは異なってくることがあります。
例えば当初はロボアドバイザーのアドバイスに基づいて、最初は株式投資信託30%・債券投資信託70%で運用していたとしても、株式市場が好調な時期が続くと、いつの間にか資産配分が株式投資信託50%・債券投資信託50%になっていたということが起こり得ます。
この場合、最初に提示された運用プランの資産配分とは異なり、自身のリスク許容度に適した資産配分ではなくなる可能性があるため、一部を売却したり買い増しをする必要があります。
資産配分の見直しのことをリバランスといいますが、アドバイス型は、リバランスを自身で行う必要があります。
アドバイス型はポートフォリオのアドバイスに留まりますが、投資一任型は金融商品の買い付けからリバランスまで行うタイプのロボアドバイザーです。
投資をしたいけれど、自身で金融商品を選んだり頻繁にポートフォリオをチェックしたりする時間がない方に向いています。
ただし自身でリバランスなどを行わないため、アドバイス型を活用するのに比べ、投資商品の特徴や値動きの仕組みといった投資の基礎知識が身に付かないかもしれません。
そのため、投資一任型を活用する場合でも取り扱っている金融商品の基本的な内容や、運用状況のチェックは定期的に行うよう心がけましょう。
ロボアドバイザーは自身のリスク許容度にあった運用が簡単にできるなど、様々なメリットがあります。
ここではロボアドバイザーのメリットを3つ紹介します。
上場株式などの個別株式に投資をする場合、売買単位が100株単位となっているため、銘柄にもよりますが、1銘柄に投資するだけでもある程度の元本が必要です。
さらに分散投資をし、リスクを抑えたいとき考えた場合には、複数の銘柄を保有することになるため、相当な資金を用意しなければなりません。
ロボアドバイザーなら、1万円程度の資金から分散投資を行うことができます。
また積立投資も併用することで、時間の分散も可能です。時間の分散とは毎月1万円、2万円など定期的に一定額を投資し続ける投資方法です。
価格変動する金融商品は、購入時期を分散させることで、暴落リスクを和らげることができます。
ロボアドバイザーは利用者に「投資経験」や「年齢」など本人のリスク許容度をはかるうえで必要な質問をしたうえで、運用プランを提示します。
そのため金融商品に関する知識が十分ではない方でも、質問に答えるだけで自身のリスク許容度にあった運用ができるようになります。
自分自身で金融商品の売買をすると、価格が上昇している局面で「もっと上がるかもしれない」という欲が出た結果、その後価格が下がって利益を逃してしまったということが起こるケースがあります。
逆に、価格が下落している局面で「そろそろ上がるかもしれない」と根拠のない期待をした結果、さらに価格が下がって損失が拡大してしまったということが起こり得ます。
しかしロボアドバイザーなら投資判断に感情を挟むことなく、合理的な判断で投資を行うことができます。
ロボアドバイザーは便利なツールですが、メリットばかりではありません。利用を検討している方は、デメリットについても確認しておきましょう。
ロボアドバイザーは、自身で金融商品を選ぶことが難しい方や、長期的な資産形成をしていきたい方に向いています。
投資家のなかには、短期間で高いリターンを狙う方もいますが、そうした投資スタイルの方にとっては、ロボアドバイザーによる運用は非効率な運用に感じるかもしれません。
ロボアドバイザーは高度な機能を有している反面、利用にあたっては手数料がかかります。また手数料はアドバイス型よりも、投資一任型のほうが高い傾向があります。
ロボアドバイザーで長期運用をする場合、運用期間が長いほど負担する総コストが大きくなっていくため注意が必要です。
ただしコストが高くても、運用が良好な場合もあります。コストだけで比較をするのではなく、コストと投資パフォーマンスのバランスの両面を見るようにしましょう。
すべてのロボアドバイザーが、NISAに対応しているとは限りません。NISA口座で運用すれば、運用益に税金がかからないため、NISA口座を活用したい場合は、NISAに対応しているロボアドバイザーかどうかを確認する必要があります。
ロボアドバイザーは投資について考える時間がない方、投資初心者、長期的に資産形成をしていきたい方に向いています。ロボアドバイザーを利用したほうがいい人の特徴について詳しく紹介します。
ロボアドバイザーは金融商品選びについてアドバイスを受けられるだけでなく、投資一任型であれば金融商品の買い付けやリバランスまで対応しています。
専門家に投資についてアドバイスを受けたくても時間がない、あるいはオンライン相談に対応している専門家がいても、夜遅くに連絡をするのは気が引けるという場合もあるでしょう。
ロボアドバイザーならサイトにアクセスすれば、いつでも自身に合った運用プランを提示してもらえます。
また投資の必要性は感じていても、日頃、家事や育児、仕事などで忙しく、金融商品分析や投資に関する情報収集をする時間がない方にも、ロボアドバイザーはおすすめです。
投資初心者のなかには、金融商品の選び方に関する知識が十分ではないため、自身で選べないという方もいるかもしれません。
ロボアドバイザーは質問に答えるだけで、おすすめのポートフォリオや金融商品まで提示してくれるため、投資初心者でもすぐに投資がスタートできます。
リスクを抑える方法は投資資産の分散だけではありません。長期間投資をするだけでも、リスクを抑えることが可能です。
金融商品は、短期的には大きな値上がりと値下がりを繰り返すことはありますが、一喜一憂せず、長期間保有し続けることで次第に振れ幅が小さくなる傾向があります。
複利効果が得やすい点も長期投資のメリットです。複利とは元本と投資の利益を再投資した場合の利益のことで、複利を利用すれば上昇局面では利益が利益を呼ぶ状態になります。
長期運用は、この複利効果をさらに高めます。
例えば100万円を利回り3%の金融商品で複利運用した場合、5年間で約116万円になります。しかし仮に20年運用すると100万円が約180万円に増加します※。
※あくまでもシミュレーションした結果であり、将来の利益を約束するものではありません。
ロボアドバイザーは、簡単な質問に答えるだけで投資に関するアドバイスが受けられる仕組みです。投資一任型の場合はアドバイスだけでなく、金融商品の買い付けからリバランスまで対応しています。
自身に合っているのはどのような運用スタイルなのか、あるいは投資対象がたくさんあるので、どれを選んだらよいかわからないという方に向いています。
ただし長期投資を前提とした仕組みなので、短期的に利益を狙いたい方には向いていません。また手数料がかかるため、どのロボアドバイザーを選ぶかは、運用益とコストの両面を見て総合的に判断する必要があります。
<執筆者プロフィール>
金子賢司(かねこけんじ)
CFP
東証一部上場企業(現在は東証スタンダード)で10年間サラリーマンを務める中、業務中の交通事故をきっかけに企業の福利厚生に興味を持ち、社会保障の勉強を始める。以降ファイナンシャルプランナーとして活動し、個人・法人のお金に関する相談、北海道のテレビ番組のコメンテーター、年間約100件のセミナー講師なども務める。趣味はフィットネス。健康とお金、豊かなライフスタイルを実践・発信しています。