COLUMN
昨今、米国の主要500社の株価から算出される指数であるS&P500に連動するインデックスファンドや、米国の個別銘柄に投資をする人が増えています。
米国株式市場は、ITや生成AI、バイオテクノロジーなどのハイテク銘柄のイメージが強いですが、生活関連や素材関連で50年以上も連続増配を続けている銘柄もある懐の深い市場です。
このコラムでは、人気の米国株の特徴や人気の理由などについてわかりやすく説明しています。米国株に関心をお持ちの方はぜひご一読ください。
ここでは、米国株(アメリカ株)の特徴を3つ挙げて説明しています。
・高値を更新し続けるマーケット
・グローバル企業が多く、新陳代謝も激しい
・株主を意識した経営をする企業が多い
米国株の特徴の1つ目は、バブルの崩壊や経済的なショックを受けても、その後回復し、高値を更新し続ける力強いマーケットである点です。
下のグラフは、米国株式の代表的な指数であるS&P500の1994年~2024年まで30年間の推移を表したものです。
S&P500指数の推移:1994年~2024年
※トレーディングビューを使用し筆者作成
1994年~2024年の間には、2001年のITバブル崩壊や2008年のリーマンショック、2020年の新型コロナショック、2022年のロシアによるウクライナ侵攻とそれに伴う世界的なインフレなどがありました。
しかし、いったんは大幅に下落するものの、その後は以前の高値を更新して、1994年の約450ポイントから2024年の5,300ポイント超と、約11倍の値上がりをしています。
このように米国株式市場は、長期保有することで資産を増やせる期待が持てるマーケットになっています。
米国株の特徴の2つ目は、世界各国で事業展開をするグローバル企業が多い点と、企業の新陳代謝が激しい点です。
たとえば、IT関連ではアップルやマイクロソフト、アマゾン、アルファベット(グーグルの親会社)など、生活関連ではマクドナルドやコカ・コーラ、P&G、ジョンソン・エンド・ジョンソン、エンターテインメント関連ではウォルト・ディズニーなどがあります。
これらの企業は、自国のみならずグローバルに事業展開をしていますので、世界経済の成長を取り込むことができます。
また、企業の新陳代謝が激しい点も米国株の特徴です。
下の表は、2005年と2024年(8/15現在)の時価総額ランキング5位までの企業の比較です。
2005年 | 2024年(8/15現在) | |
1位 | ゼネラル・エレクトリック | アップル |
2位 | エクソンモービル | マイクロソフト |
3位 | マイクロソフト | エヌビディア |
4位 | シティグループ | アマゾン・ドットコム |
5位 | BP | メタ・プラットフォームズ |
出典:内閣府(2005年) 、日経新聞データ(2024) のデータをもとに筆者作成
2005年のランキングの上位5社は、2024年のランキングではマイクロソフト社を除き、ランク外になっています。
このように企業や業種の新陳代謝が激しいことも米国株の特徴の1つといえます。
米国株の特徴の3つ目は、株主を意識した経営をする企業が多い点です。
たとえば、株主資本(自己資本)をどれたけ効率的に使って利益を上げているのかをみる指標のROE(自己資本利益率)を、日本株と比較しますと、日本株(日経平均株価)が8~9%前後なのに対して、米国株(S&P500)は17~18%前後と、日本株の約2倍です。
個別企業では、アップル約170%、マイクロソフト約37%、コカ・コーラ約42%など米国株の平均ROEを大きく超えている企業もあります。
ROEは「当期純利益÷自己資本×100」で計算します。
また、株主還元にあたる配当や自社株買いに積極的な企業が多いのも、米国株の特徴の1つです。
自社株買いは、自社の株式を株式市場で購入することで市場に流通する株式数を減らし、それにより1株当たりの純利益を増やす効果が期待できる株主還元です。
つまり、株主にとっては1株あたりの利益配分が増えることになります。
出典:日経平均、S&P500のデータは株式マーケットデータを参照
個別企業のROEは日経新聞のデータを参照
ここでは、米国株が人気の理由を5つ挙げて説明しています。
・長期的な値上がりが期待できる
・日本でも人気のある企業に投資できる
・少額から投資が可能
・連続増配している銘柄へ投資できる
・年間の配当回数が多い
米国株の人気の理由の1つとして、過去数年ごとに下落局面はありましたが、長期的には上昇してきたという安心感と、長期保有をすることでリターンが期待できる点です。
「米国株(アメリカ株)の特徴」の見出しではS&P500の30年間の推移を確認しましたが、ここではNYダウの過去30年間の値動きを確認します。
下のグラフを見ると、NYダウも右肩上がりで推移していることがわかります。1994年時点で約4,000ドル、2024年8月が40,000ドル前後ですので、約10倍に値上がりました。
(NYダウの推移:1994年~2024年)
出典:トレーディングビューを使用し筆者作成
米国株が人気の理由の2つ目は、自分が使っている製品や利用しているサービスを提供している会社へ投資ができるという点です。
たとえば、IT関連ではアップルやマイクロソフト、生活関連ではマクドナルドやコカ・コーラ、P&G、通販関連ではアマゾンがあります。
また、これらの銘柄はNYダウの構成銘柄になりますので、NYダウに連動する投資信託やETFを購入することで銘柄を分散した投資も可能です。
米国株が人気の理由の3つ目は、少額から投資ができる点です。
米国株は1株から購入できるものが多いので、数万円の購入資金で米国株投資を始めることができます。
加えて1銘柄数万円から投資が可能なので、複数の銘柄に分散した投資も、比較的少額から行えます。
米国株が人気の理由の4つ目は、長期にわたって連続増配している銘柄へ投資できる点です。連続増配とは、年間の1株当たりの配当金額が増加し続けている銘柄になります。
日本では、30年以上連続増配を続けている花王が有名ですが、米国では50年以上連続増配している企業があります。
日本でも知名度のある銘柄でいえば、P&Gが67年、3Mが65年、コカ・コーラとジョンソン・エンド・ジョンソンが61年、ウォルマート・ストアズが50年などです。
(連続増配企業TOP5:NYダウ構成銘柄)
順位 | 銘柄名 | 増配年数 |
1 | P&G | 67 |
2 | 3M | 65 |
3 | ジョンソン・エンド・ジョンソン | 61 |
4 | コカ・コーラ | 61 |
5 | ウォルマート・ストアズ | 50 |
参照:投資の森
米国株が人気の理由の5つ目は、日本株に比べ配当回数の多い銘柄が多い点です。
日本株は、年2回の配当が一般的ですが、米国株の場合は年4回配当する企業が多く存在します。
四半期(3カ月)ごとに配当を受け取れると、配当月が異なる3つの銘柄に投資をすることで毎月配当を受け取ることが期待できます。
ただし、配当は当期の利益から支払う必要がありますので、業績のいい銘柄を選んで投資することが大切です。
NYダウの正式名称は「ダウ・ジョーンズ工業株価平均」です。ニューヨーク証券取引所やナスダックに上場している銘柄から、S&Pダウ・ジョーンズ・インデックス社が30銘柄を選出して構成されています。
NYダウは、マグニフィセント・セブン(アマゾン・ドットコム、アップル、アルファベット、エヌビディア、テスラ、マイクロソフト、メタ・プラットフォームズ)の内、アマゾン・ドットコム、アップル、マイクロソフトの3社が採用されています。
そのため、マグニフィセント・セブンのすべての銘柄が採用されているS&P500指数に比べ、大手IT企業の影響を受けづらいという特徴があります。
下の表は、NYダウ採用30銘柄の直近2年間の配当開始時期を基づき、配当月ごとにグループ分けした一覧表です。
ほとんどの銘柄が年4回の配当を出していることが確認できます。また、NYダウの平均配当利回りは2.08%と、S&P500の1.84%に比べ高い傾向があります。
出典:投資の森 2024年8月18時点の配当利回り
毎月配当金を受け取れるようなポートフォリオを組みたい場合は、表にある上の3つのグループからグループごとに1銘柄以上選ぶといいでしょう。
ただし、企業の業績が悪い場合は無配になることもありますので、連続増配しているかどうかなどを参考にして銘柄を選ぶのも一案です。
出典:ブルームバーグ のデータより筆者作成
このコラムでは、米国株の特徴や人気の理由について説明しました。
米国株は、長期的な値上がりが期待できたり、年間の配当回数が多いので配当を楽しみに長期保有ができたりするメリットがあります。
反面、米国株への投資は為替の影響を受けますので、米ドルに対して円高になると収益が減少するリスクや、日本株に比べて投資した企業(銘柄)の情報が取りづらいというデメリットがあります。この点も押さえた上で、米国株への投資を検討するようにしましょう。
<執筆者プロフィール>
恩田 雅之
オンダFP事務所 代表
2004年のオンダFP事務所を札幌に開業。初心者向け資産運用に関するセミナーと投資信託などの資産運用を中心として記事の執筆及び生命保険、住宅関連(ローンや税金など)、クレジットカード、カードローン、暗号資産などの記事監修を中心に活動しています。セミナーと執筆では初心者の方にもわかりやすいように、平易な言葉を使うよう心掛けています。